株式会社コントロールテクノロジーは、ベトナム・ハノイに海外支社コントロールHRT(Control HRT)を構えています。
ベトナムは近年、目覚ましい経済成長を遂げており、2024年にはGDP成長率が約7%に達しました。2025年も同水準の成長率を目標として掲げています。この著しい発展を支える重要な要素の一つが交通インフラの整備です。現在、政府主導で主要都市間を結ぶ高速道路や鉄道の建設が積極的に進められており、物流の効率化と地域間の連携強化が図られています。
特に注目されているのは、ハノイとホーチミン市を結ぶ全長1,541kmの高速鉄道プロジェクトです。このプロジェクトはベトナム政府によって既に承認され、2027年の着工、2035年の運行開始を目指しています。
本記事では、急速な経済成長を遂げるベトナムの現状を、交通インフラの視点から分析し、その展望について詳しく探ります。
目次
ベトナム経済の発展

ベトナムは1986年に導入されたドイモイ(刷新)政策を契機として、市場経済化と対外開放を積極的に推進し、急速な経済成長を遂げてきました。この改革により、農業中心の経済構造から、工業やサービス業主体の多角的な経済構造へと移行が進み、外国直接投資(FDI)の受け入れ拡大にも成功しています。
主要産業の発展状況
- 農林水産業
GDPに占める割合は約12%で、依然としてベトナム経済の重要な柱となっています。ドイモイ政策後、農業生産の自由化や市場参入の促進により生産性が著しく向上しました。 - 製造業
GDPの約37%を占め、製造業の拡大が目立っています。特に電子機器や繊維製品の輸出が拡大しており、グローバルな製造拠点としての地位を固めています。 - サービス業
GDPの約43%を占め、観光業や小売業が中心となってベトナム経済の成長を牽引しています。近年は特に観光業の回復が顕著で、サービス業全体の発展に大きく貢献しています。
経済成長率の推移
2023年の実質GDP成長率は5.05%でしたが、2024年には7.09%まで加速しました。特に第4四半期(10~12月)においては前年同期比で7.55%という高い成長率を記録しており、輸出増加や外国投資の活発な流入が主な要因とされています。
また、ベトナムは地理的優位性や政治的安定性を背景に、外国直接投資の受け入れを拡大し続けています。2024年は特に中国をはじめ香港や台湾などからの投資が堅調で、認知度も高まりました。また、政府はハイテク産業への投資誘致に力を入れており、半導体製造、人工知能(AI)、グリーンエネルギーなどの分野への進出促進が進められています。
交通インフラの現状

ベトナムは急速な経済成長を遂げる中で、交通インフラの整備が大きな課題となっています。以下では、各交通手段の現状とその課題について詳しく解説します。
都市鉄道(メトロ)
ハノイでは、初の都市鉄道である2A号線(カットリン~ハドン間)が2021年11月に開業しました。さらに3号線(ニョン~ハノイ駅間)の建設が進められ、2024年8月8日に高架区間(ニョン駅~カウザイ駅間:8.5km、8駅)が開業しています。しかし、地下区間(カウザイ駅~ハノイ駅間:4km、4駅)は遅延が続き、完成は2027年を目指しています。これらのプロジェクトは計画の遅れに加え、予算超過も問題となっています。
一方、ホーチミン市では都市鉄道1号線(ベンタイン~スオイティエン間)が2024年12月22日に正式開業しました。2007年の計画承認後、資金調達の難航、設計変更の頻発、工事の遅延や政治的調整の課題などが重なり、完成まで実に17年を要しましたが、開業後1週間で70万人以上が利用するなど、市民から高い関心を集めています。
道路交通
2023年9月時点で、ベトナムの高速道路の総延長は1,832kmに達しています。政府は2025年までに3,000km、2030年までに5,000kmへの拡張を目標として掲げていますが、車両数の急増により、都市部では深刻な交通渋滞が頻発しており、高架道路や橋梁整備の遅れが大きな課題として指摘されています。
また、都市部の交通渋滞対策として、交通マナーの向上も重要な課題となっています。そこで、ハノイやホーチミン市では新たな交通規制が施行され、徐々に交通法規遵守の意識が向上しています。これらの取り組みを通じて、持続可能な交通インフラの発展が期待されています。
鉄道交通
ベトナムの鉄道網は全長約2,600kmで、ハノイ~ホーチミン間の南北線が主要路線です。しかし、設備の老朽化や技術的な遅れにより、輸送速度や能力向上が求められています。政府はこれに対処すべく、2024年11月に総額670億ドルの高速鉄道プロジェクトを承認し、2027年の着工、2035年の運行開始を目指しています。
さらに、2025年2月には中国からの融資を活用し、ラオカイ~ハノイ~ハイフォンを結ぶ391kmの新鉄道建設計画が発表されました。旅客と貨物の両方に対応した当路線は、2025年内の着工、2030年の完成を目標としています。
航空交通
航空需要の急増により、主要空港の拡張や新空港建設が進められていますが、特にハノイのノイバイ国際空港やホーチミン市のタンソンニャット国際空港では混雑が深刻化し、運航の遅延やサービス品質の低下が課題となっています。
こうした状況を改善するため、ホーチミン市近郊のドンナイ省では、ロンタイン国際空港の建設が進行中です。総面積5,000ヘクタール、総投資額約336兆6,300億ドン(約1兆9,800億円)に及ぶ大規模プロジェクトで、2021年に着工が始まりました。第1フェーズとして滑走路1本と年間2,500万人が利用可能なターミナルが建設され、2026年の完成を予定していましたが、進捗が順調なため、現時点では2025年末までの完成を目指しています。
交通インフラが経済発展に与える影響

交通インフラの整備は、ベトナムの経済発展に多岐にわたる影響を及ぼしています。以下に、主要な影響を解説します。
地域間の連携強化と物流効率化
高速道路網の拡充により、国内各地域間の連携が緊密になり、物流の効率化が進展しています。特に南北高速道路の部分的な整備により、主要都市間の輸送時間が大幅に短縮され、商品の迅速かつ効率的な流通が可能となりました。その結果、企業の生産性向上や経済活動の活性化につながっています。
観光産業の振興
交通アクセスの改善は観光産業の発展にも大きく寄与しています。例えば、ニントゥアン省ではカムラム-ヴィンハオ間の高速道路が開通したことで、2024年の観光客数は前年同期比17.2%増の340万人に達しました。利便性の向上により観光客の滞在期間が延び、リピーターが増加するなど、地域経済の活性化に貢献しています。
都市化と地方開発の促進
交通インフラの整備は、都市と地方におけるバランスの取れた発展を後押ししています。新規の道路や鉄道の建設が地方への投資を促進し、工業団地や経済特区の整備が進展しています。これにともない、地方での雇用創出や住民の生活水準向上が期待されています。
今後の展望

ベトナムの交通インフラ整備は、持続的な経済成長を実現する上で重要な役割を担っていますが、同時にさまざまな課題にも直面しています。以下では、持続可能な発展に向けた主な課題と今後の展望について解説します。
環境配慮型インフラの整備
交通インフラの拡充にともない、環境負荷の増大が懸念されています。持続可能な成長を維持するためには、環境に配慮した交通インフラの整備が重要です。ベトナム政府は電気自動車(EV)の普及を促進しており、EV充電設備の整備拡充などを通じて環境負荷の低減を目指しています。
人的資本の育成と技術革新
高度化する交通インフラを効果的に運営・維持管理するためには、専門的知識や先端技術を有する人材が不可欠です。ベトナムでは現在、交通分野における専門人材の不足が課題となっており、教育・訓練の充実や最新技術の導入促進が求められています。都市鉄道の運行・管理分野などを中心に、専門性の高い人材育成や技術革新の加速が必要です。
地域間格差の是正
交通インフラの整備状況には地域間で格差があり、主要都市と地方間でその進展度合いに差が見られます。地域間格差の是正には、インフラ整備を均等に推進し、地方都市と主要都市間の連携を強化する必要があります。その一環として、政府は南北高速鉄道などの大規模プロジェクトを推進しており、地域間のアクセス改善と経済的格差の縮小が期待されています。
まとめ
ベトナムの経済発展と交通インフラ整備は、相互に密接な関係を持っています。交通インフラの整備は地域間連携の強化、物流の効率化、観光産業の活性化、さらには都市化や地方開発の促進に大きく貢献しています。一方で、持続可能な発展を実現するには、環境への配慮、人材の育成と技術革新、地域間の格差是正といった課題への対応が不可欠です。
今後、こうした課題に取り組みながらインフラ整備を進めることにより、ベトナムは、より持続的な経済成長を成し遂げることが期待されています。